大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和25年(さ)32号 判決

本籍

京都市下京区万寿寺通油小路西入樋口二八〇番地

住居

東京都台東区御徒町三丁目三二番地 親善マーケット内

露天商手伝

義男こと

西島好富

昭和六年八月二一日生

右の者に対する窃盗被告事件について、昭和二四年六月九日台東簡易裁判所の言渡した判決に対し、検事総長から非常上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件非常上告を棄却する。

理由

本件非常上告趣意について。

非常上告は、法令の適用の誤りを正し、もつて、法令の解釈適用の統一を目的とするものであつて、個々の事件における事実認定の誤りを是正して被告人を救済することを目的とするものではない。されば、実体法たると手続法たるとを問わず。その法令の解釈に誤りがあるというのでなく、単にその法令適用の前提事実の誤りのため当然法令違反の結果を来す場合のごときは、法令の解釈適用を統一する目的に少しも役立たないから、刑訴四五四条にいわゆる「事件の審判が法令に違反したこと」に当らないと解するのを相当とする。そして、本件では、本案事件の公訴提起当時においては勿論その第一審判決当時においても、被告人の年齢が二〇歳以上であると認定されていたことは記録上明白なのであるから、たとえ、その判決後になつて被告人が実際は少年であつたことが判明したとしても、検察官が公訴提起前あらかじめ事件を家庭裁判所に送致する手続を執らなかつたのを目して、公訴提起の手続規定の解釈を誤りその結果その手続規定に違反したとはいえないし、また、第一審裁判所が公訴提起手続違反を理由として公訴棄却の判決をしないで被告人を懲役一年但し三年間その刑の執行を猶予する旨の判決を言渡したのを、まさしくその審判法令に違反した場合に当るものということはできない。それ故、本件非常上告は採ることができない。

よつて、刑訴四五七条に従い、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

検察官 堀忠嗣関与

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 齋藤悠輔)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例